今年度初の繭出荷
秩父地域では、古くから養蚕が盛んです。現在も地域の重要な作目として位置付けられる伝統産業の一つです。
しかし、高齢化や担い手不足、絹の需要及び繭価の低迷により、農家戸数が年々減少していることから、県産ブランドで秩父限定品種の「いろどり」繭による差別化した繭生産と産地の活性化を図ります。現在8軒の養蚕農家が地域の伝統産業を守っています。
JAちちぶ養蚕部会は、秩父西支店敷地内の出荷所で、今年度初、春蚕期(しゅんさんき)の繭出荷として、6月18日に「いろどり」繭、22日に白繭の選繭(せんけん)と出荷作業をしました。今年は、例年に比べ、良質な繭が多く出荷されました。
作業には、部会員やJA職員らが参加。春蚕期は例年「いろどり」繭のみの出荷でしたが、今期、初めて「いろどり」繭と白繭の2種類を8軒(各種4軒ずつ)の農家が出荷。集められた繭は、全て製糸業者が買い取ります。
瀬能副部会長は「今年は3月から急に暖かくなり、餌になる桑の生育が良かった。丈夫に蚕が育ち、良質な繭が多く出荷できた」と喜び、「今後も農家みんなで、秩父の養蚕の伝統を守っていきたい」と話します。
繭は、農林総合研究センター秩父試験地内の稚蚕飼育場で、部会員とJA職員らが稚蚕共同飼育をして、2齢まで育てた蚕を5月20日に各農家へ配蚕して育てました。
同部会では今年度、「いろどり」繭を春蚕期の1回、「白繭」を春蚕期・夏蚕期・晩秋蚕期・晩々秋蚕期の4回の出荷を予定しています。
限定品種の「いろどり」繭は、フラボノイド色素を含む笹繭で、淡い黄緑色をしています。こしやはりがあり、白繭にはない抗菌作用をもっています。摩擦に強いなどの特徴から、高級布団の側生地や真綿に多く使われ、西陣織の帯地や高級和装織物などにも使われます。また、保湿効果や抗酸化作用、紫外線吸収機能に優れる、シルクタンパク質「セリシン」を多く含みます。和装需要のみに依存する繭需要構造から、新たな分野における需要拡大が必要となり、「化粧石鹸(いろどり(石鹸))」などにも使われます。
同地域で、毎年12月3日に開かれる、日本三大曳山(ひきやま)祭りの一つである秩父夜祭りも、一年の最後を飾る絹の大市の付祭りが発祥ともされ、別名「お蚕祭り」ともいわれます。翌日4日には、秩父神社にて「養蚕倍盛祈願祭(蚕糸祭)」が執り行われます。